気象情報のサービスを行うウェザーニューズ社。
天気予報を見るなど、利用されている方も多いのではないのでしょうか。
内容を見ていきましょう。
会社概要
民間総合気象情報サービスの草分け的な存在であり、民間気象情報で世界大手の会社です。
気象・海象・地象・水象・宙象のデータを主体的に収集し、このビッグデータを解析して、状況に応じ対応策コンテンツに加工し配信するサービスを行っています。
法人向け(BtoB事業)は、交通、環境、スポーツなどの多様な産業分野において、気象予報に基づく業務支援サービスの提供しています。
個人向け(BtoS事業:Sはサポーター)は、
・携帯端末、インターネットサイトを通じた気象コンテンツの配信
・放送局、ラジオ局などへのコンテンツ提供
を行っています。
情報収集やコンテンツ展開のプロセスにおいて、ウェザーニューズ社が一方的にサービス提供するのでなく、企業や個人もプロセスに参加して、ともに気象をベースとした価値創造サービスを作り出していることが特徴的です。全国の参加者からの情報を生かして、天気予報の精度を上げています。
アプリが業績に与える影響
直近4期分の連結業績を並べていき、トレンドを確認していきましょう。
■18年5月期:
売上高 15,874百万円
営業利益 2,490百万円
純利益 1,138百万円
■19年5月期:
売上高 17,052百万円
営業利益 2,045百万円
純利益 1,370百万円
■20年5月期:
売上高 17,953百万円
営業利益 2,280百万円
純利益 1,629百万円
■21年5月期:
売上高 18,843百万円
営業利益 2,444百万円
純利益 1,861百万円
ここ最近は、毎年売上を着実に伸ばしてきているのが分かるかと思います。
コロナ禍の21年5月期に関しても、前期から890百万円増やして、18,843百万円となっています。
営業利益、純利益に関しても、売上に連動する形で順調に増えてきています。
21年5月期の売上高営業利益率は13%(営業利益2,444百万円÷売上18,843百万円)となっており、高い利益率をキープしています。
21年5月期をもう少し見ていきましょう。
内訳を決算説明資料に沿って見ていきましょう。
一番左の20年5月期の売上17,953百万円から、一番右の21年5月期の売上18,843百万円に至るまで、売上の増減要因を示したグラフになっています。
青い棒グラフが増加を表しています。
表の真ん中ほどに飛びぬけて増えている売上がありますね。
Mobile-Internetと書いてあります。
下の分析を見ると、BtoS(個人事業向けのサービスですね)について、アプリのサブスクリプション売上、広告売上が増加したとしています。
他の棒グラフを見ると、そこまで大きく動いたものはありません。
21年5月期の売上増加の影響は、これが主な要因ということでしょうね。
ウェザーニューズ社のアプリは、累計3,000万以上のダウンロードがあります。
情報量あるいはその正確性においては、業界最大手ということもあり、圧倒的です。
無料で多くの機能を利用できますが、有料(360円/月)にすると
・雨雲レーダーを27時間先まで確認できる(無料は1時間先まで)
・住んでいる街の台風影響
・台風や大雪など災害時の鉄道、高速道路、航路の影響
など、さらに多くの情報を得ることができます。
アプリ利用者がのびてくれば、有料会員も増えてきます。
たくさんの利用者が情報に触れる機会も増えて、広告売上も期待できます。
アプリ利用者の増加が、ウェザーニューズ社にとっての好業績の一因となっていますし、さらなる事業拡大のカギを握っていると言えそうです。
トールゲート売上とは
決算説明資料から、売上の主な増加要因が分かりました。
今度は金額を詳細に把握していきましょう。
まずは法人向け(BtoB事業)と個人向け(BtoS事業)に分けてみます。
■BtoB事業:
売上高10,259百万円(対前期▲5百万円、増減率▲0.0%)
■BtoS事業:
売上高8,583百万円(対前期+895百万円、増減率+11.6%)
BtoS事業の売上が大きく伸びています。
モバイル・インターネット気象において、コンテンツの充実やテレビCM等の広告によりトラフィックが増大したことでDAU(Daily Active Users、1日にサービスを利用したアクティブユーザー)をより多く獲得しています。
先ほど見たとおり、利用数が増加したことにより、スマートフォン向けサービスと広告事業が好調に推移しています。BtoS事業の成長が、21年5月期のウェザーニューズ社の業績を牽引した形です。
エンジニア獲得による人件費やCM増加による広告宣伝費は増えていますが、それに伴う売上も着実に成長しています。
次にBtoB事業の内訳を見ていくことにしましょう。
提供内容によって売上推移が異なっていますね。特に売上規模の大きい航海気象と陸上気象については共に増収となっています。
・航海気象は、船舶の稼働率は低迷しているものの、アジアのバルク・タンカー市場や米州のバルク市場において新規顧客を獲得
・陸上気象は、日本の道路・鉄道市場において気候変動がもたらす極端気象(気象庁によれば、極端な高温/低温や強い雨など、特定の指標を越える現象のことで、具体的には猛暑日や1時間降水量が50mm以上の強い雨とのこと)に対応するサービスを獲得
などにより、増収しています。
一方で、新型コロナウイルスによる影響でエアライン市場の低迷により、航空気象は減収となっています。
ウェザーニューズ社の売上には2種類あります。
・トールゲート
・SRS(Stage Requirement Settings、スポット収入)
トールゲートは、高速道路の料金所(トールゲート)のように、ウェザーニューズ社が構築したインフラを利用し、お客様へ気象サービスを提供することで、継続的な収入が計上できるものとしています。ウェザーニューズ社が定義づけを行っています。
気象情報なので毎日利用する情報ですし、他社が同様のサービス提供することは難しいですね。ウェザーニューズ社しかできない価値提供を行うことで、継続的な収入を獲得できる強みがここにあります。
売上高のほとんどはトールゲートに関するものです。
トールゲートの状況次第で、ウェザーニューズ社の業績は変わってきますし、上手く獲得できれば、継続的な収入が見込めます。
22年5月期はどうなっているか
第3四半期までの累積業績が、4月に公表されています。
法人向け(BtoB事業)と個人向け(BtoS事業)は、以下のとおりです。
(会計ルールが変更されたことによる売上高の変動はありますが、影響は小さいため、ここでは単純比較しています。)
■BtoB事業:
売上高7,777百万円(対前期+342百万円、増減率+4.6%)
■BtoS事業:
売上高6,937百万円(対前期+686百万円、増減率+11.0%)
BtoSは前期に引き続き、好調をキープしています。
BtoB事業に関しては、前期とは異なり売上を伸ばしています。
さらに事業ごとに内訳を見ていきます。
航海事業は、海運市況の回復に伴い、船舶の稼働率が改善が継続され、日本・欧州の既存顧客を中心に、トールゲート売上が増加しています。
航空事業の売上自体は減少していますが、トールゲート売上は前期602百万円から、当期643百万円と改善しています。
新型コロナウイルスの影響によるエアライン市場の市況は低迷していますが、国内ヘリコプター市場での顧客獲得により、増加しているとしています。
独自サービスの展開により、潜在的需要はまだまだあって、今回新たな獲得に至っています。さらなる市場開拓がどこまで拡大していくかが、期待されるところです。