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【ピジョン】決算書から業績を読むうえで気をつけたいこと

2月15日にピジョンの21年12月期決算の発表がありました。

育児用品や介護用品などをメインに扱っている会社です。
内容を見ていきましょう。

当記事で引用する決算関連資料
18年9月 決算期変更のお知らせ
19年12月期 決算説明資料
20年12月期 有価証券報告書
21年12月期 決算短信

12月決算(決算期間:1月1日~12月31日)の会社です。
当記事で使用する金額は、百万円未満を切捨てています。

会社概要

ピジョンは、主に育児用品や介護用品の製造、仕入、販売を行っており、地域別などで
①日本事業
②中国事業
③シンガポール事業
④ランシノ事業
の4つの事業を行っています。

①日本事業

日本事業においては、さまざまなサービスがあります。
サービスごとにグループ会社の役割を分けており、幅広い国内ニーズに応えていますね。

・ベビー・ママ関連は、国内外の子会社で製造した育児用品を、他の仕入商品とともに販売
・子育て支援関連では、保育・託児・幼児教育事業の実施
・ヘルスケア・介護関連は、子会社で製造した介護用品を、他の仕入商品とともに販売
・在宅介護支援サービスの実施
・通所型介護施設サービスの実施

20年12月期 有価証券報告書 p.5

②中国事業、③シンガポール事業

海外子会社で製造した育児用品を、他の仕入商品とともに販売しています。

展開エリアとしては、中国事業が中国・韓国・フィリピン・ロシアなど、シンガポール事業が、シンガポール、インド、インドネシア、他のASEAN諸国、中近東諸国、オセアニアなど、としています。

20年12月期 有価証券報告書 p.5

④ランシノ事業

2004年にグループ傘下に入ったLANSINOHLABORATORIES, INC.のランシノブランドは、主力の乳首ケアクリームや母乳パッド、さく乳器や母乳保存バッグ等の母乳関連商品ブランドとして高い認知度があり、世界的に事業を拡大しているようです。

子会社のLANSINOH LABORATORIES MEDICAL DEVICES DESIGN INDUSTRY AND COMMERCE LTD.CO.などで製造した育児用品を、他の仕入商品とともに販売しています。

アメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、中国など、多くの世界各国に対して、展開を行っているようですね。

20年12月期 有価証券報告書 p.5

連結業績

今回発表された21年12月期も含めて、直近4年分の業績を見ていきます。

■19年1月期:売上104,747百万円、営業利益19,612百万円、親会社利益14,238百万円
■19年12月期:売上100,017百万円、営業利益17,072百万円、親会社利益11,538百万円
■20年12月期:売上99,380百万円、営業利益15,316百万円、親会社利益10,643百万円
■21年12月期:売上93,080百万円、営業利益13,336百万円、親会社利益8,785百万円

コロナウイルスによる市場環境などもあって、売上は徐々に減ってきています。
営業利益や親会社利益についても、売上が下がってきていますから、落ち込んできており苦戦しているようです。

ただ業績を見ていくうえで、留意すべき事項があります。

19年12月期の業績について

通常1年(12か月)で決算を行いますが、19年12月期は11カ月決算(19年2月~19年12月)となっています。

ピジョンは海外展開を積極的に行っており、海外売上の比率が高くなっています。
海外は12月決算の会社が多いため、グローバルな事業経営を進めていくため、12月決算に変更をしているようですね。

また国際的な会計基準であるIFRS(イファース)の適用も視野に、決算期を12月に統一するものとされています。

18年9月 決算期変更のお知らせ

では仮に12か月決算だった場合、どうなっているのか。
決算説明資料を確認していきます。

19年12月期 決算説明資料 p.8

右に記載されている19年12月期は、12か月決算に換算されており、ともに12カ月決算として並んでいます。比較しやすくなりましたね。

19年12月期の売上は、103,513百万円(98.8%)として減収、営業利益は17,213百万円(87.8%)として減益となっています。

11カ月決算の場合は、売上100,017百万円でしたから、単純に11で除して12を乗じた金額とは、だいぶずれています。季節的な要素も含めて、12か月換算されているものと考えられますね。

さて、換算後であっても減収減益ですから、トレンドとしては経営環境は厳しくなっていることが分かります。

21年12月の業績について

会計上の扱いとして、「収益認識に関する会計基準」というルールがあり、これが21年12月期より適用されています。ピジョンに限らず、日本の会計ルールに従って財務諸表を作成している会社(他に国際会計基準や米国基準を適用している会社などがあります)は、当期より適用しているケースがほとんどかと思われます。

このルールを適用すると、今まで計上していた売上が認められなくなったり、費用で計上していたものが売上のマイナスで処理しないといけないなど、多くの会社は、売上が減ってしまう可能性があります。

今までと同様の取引をしていたのに、売上が減るなんて、、と嘆きたくもなりますが、ルールなので仕方ない部分はあります。
ですが、会社にとってはインパクトが大きい変更ですね。

ピジョンの一例として、販売費及び一般管理費に計上していた販売促進費の一部を、売上から減額することとしたとしています。

21年12月期 決算短信 p.14

たとえば売上100、売上原価60、販売費及び一般管理費30(うち販売促進費20)の場合、

「売上100」-「売上原価60」ー「販売費及び一般管理費30」=営業利益10
としていたのが、

「売上80(売上100から販売促進費20を控除)」-「売上原価60」ー「販売費及び一般管理費10(販売促進費20を控除)」=営業利益10
になるといったイメージです。

上の例だと、営業利益は変わらないものの、売上は下がるのでインパクトがありますね。

21年12月期 決算短信 p.14

ピジョンの場合、このルールを適用すると、売上が5,219百万円、営業利益が239百万円減少するということです。決算数値を前期などと比較してみる場合、この影響も考慮しておかないと経営の実態が見えないということになってしまいます。

さて、上記の影響を踏まえ、21年12月期はどうだったのでしょうか。

売上については、
・収益認識に関する会計基準の適用
・各市場でのコロナウイルスの影響が継続
により、減収となっています。

営業利益は、
・売上の減少
・新商品投入に伴う積極的な販売促進費、広告宣伝費等の使用
・将来に向けた商品力強化を目指した研究開発費の拡充等
などで減益になったとしています。

21年12月期 決算短信 p.2