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【スマレジ】決算書から事業拡大の状況を読む

去年12月にスマレジ社で、子会社取得のリリースがありました。
子会社が登場したことで連結決算を行う必要が出てきたようです。

内容を見ていきましょう。

当記事で引用する決算関連資料
20年4月 決算説明資料
21年4月 決算説明資料
21年4月 有価証券報告書
21年12月 株式取得による子会社化のお知らせ

4月決算(決算期間:5月1日~翌年4月30日)の会社です。
当記事で使用する金額は、百万円未満を切捨てています。

会社概要

スマレジ社は、小売業や飲食・サービス業の店舗運営の効率化を実現するため、売上分析や高度な在庫管理を行うことができる、クラウド型POSレジ「スマレジ」のサービス展開を行っています(会社名とレジシステムが同じ名称なので、会社名のときはスマレジ社とします)。

従来型のPOSレジだと、実際にレジを設置する必要がありました。
「スマレジ」の場合、クラウド型であり、新たなPOS端末を購入しなくても、既存のiPadやiPhoneなどに、専用アプリをダウンロードすることで使用できます。

小売やアパレル、飲食店など多くの業態に応える機能を有し、小規模から大規模チェーンまで幅広い事業者を対象としていることも魅力です。

POSレジをはじめ、自販機・eコマース・券売機など、いろいろな販売データが集約され、これらのビッグデータを通して、さまざまな分析が可能となります。販売の効率化、消費トレンドの可視化、未来の購買予測まで、可能になるかもしれないとしています。

消費者のニーズに応じたサービス提供を受けられる可能性があり、これからのサービス拡大が気になるところですね。

この他にもいくつかサービスを行っており、飲食店の注文管理の機能を備えた「スマレジ・ウェイター」というシステムがあります。

テーブルについたお客様から注文を受けると、「スマレジ・ウェイター」のテーブル情報に注文が登録・管理され、厨房やレジにもシームレスに情報が共有されます。

注文を管理するだけでなく、クラウド上の管理画面では、入店状況や注文状況など、お店の状態をリアルタイムでどこからでも確認することができるとしています。

またクラウド型の勤怠管理サービスとして、「スマレジ・タイムカード」というサービスがあります。

出勤・退勤などの勤怠情報を記録・管理するだけでなく、勤怠情報を利用した給与計算、休暇管理、シフト管理、日報、プロジェクト管理機能など、クラウド型を生かしたサービス展開を行っています。

上記のほか、クラウドサービスでユーザーが使用するタブレット、レシートプリンター等のレジ周辺機器等の販売を行っています。

直近業績

スマレジ社は直近3年間は子会社などのグループ会社が存在していません。
なので連結財務諸表の作成は不要で、以下はスマレジ社のみの数値になっています。

連結財務諸表を作成している会社の場合、最終利益として会社に残る利益は「親会社利益(正式名は「親会社株主に帰属する当期純利益」)」になります。

連結子会社の株主には、親会社株主以外にも株式を所有している、いわゆる非支配株主(支配権を有しない株主)がいるケースがあります。この場合、当期純利益のうち非支配株主に帰属する利益を除いたものが、「親会社利益」となります。

これまでのように子会社がおらず、単体(1社のみの)財務諸表を作成する場合であれば、非支配株主は存在しないので、当期純利益がすべて会社に帰属する利益となってきます。

では、スマレジ社の業績を見ていきましょう。

■19年4月期:
売上1,976百万円(対前期+583百万円、増減率+41.8%)、
当期純利益293百万円(対前期+75百万円、増減率+34.4%)
■20年4月期:
売上3,249百万円(対前期+1,273百万円、増減率+64.4%)、
当期純利益547百万円(対前期+254百万円、増減率+86.6%)
■21年4月期:
売上3,324百万円(対前期+74百万円、増減率+2.3%)、
当期純利益583百万円(対前期+36百万円、増減率+6.5%)

いかがでしょうか。
売上、当期純利益ともに順調に前年を上回っています。

21年4月期の売上や当期純利益の増加率は下がっています。
一方、20年4月期に関して、売上の増加率が顕著ですね。

このあたりを探っていきます。

事業拡大は順調かどうか

売上をもう少し掘り下げて見ていきましょう。

クラウド型POSレジ「スマレジ」については、お客様から毎月利用料として継続的に獲得する、いわゆるサブスクリプション型のサービス売上と、「スマレジ」の初期導入などに関して関連機器の販売に関する売上があります。

21年4月期を見ると、クラウドサービス月額利用料等(サブスクリプション型)の売上は1,851百万円(対前期+301百万円)、クラウドサービス関連機器販売等の売上は1,462百万円(対前期▲222百万円)となっています。

21年4月期 有価証券報告書 p.20

全体の売上は前期より増加しているものの、内訳を見ると関連機器販売は減収していますね。順調そうに見えるサービスですが、なぜ減少しているのでしょうか?

解決するためには前期の売上にまず着目してみましょう。

20年4月期の決算説明資料を見ていきます。
四半期ごとの売上推移が記載されたグラフです。

20年4月期 決算説明資料 p.16

関連機器販売は、2Qで急に売上が増えていて669百万円となっています。
一方で、その後は売上が落ちていて、4Qは300百万円に落ち着いていますね。

コメント欄に「2Qの軽減税率特需により、関連機器販売・月額利用料が増加」とありました。

19年10月から消費税が8%から10%へ引き上げられました。と同時に食料品などの購入に対しては8%を適用するという軽減税率が導入されました。

これまでのような単一の税率でなく、商品などによって異なる税率があることで、事業者にとってはレジの買い替えなどの必要に迫られました。スマレジはipadなどを利用したクラウドサービスですからレジを買い替えることなく、事業者にとっては導入コストを抑えられるというメリットで、多くの利用者を獲得しています。

消費税の増税という特殊要因によって、一時的に関連機器販売が増えてことが分かると思います。

コメント欄には「4Qに新型コロナウイルスの影響を受け、休止店舗やダウングレードが急増」ともあります。主にクラウドサービス月額利用料等(サブスクリプション型)の売上減少のことを指していますが、関連機器販売にも影響している可能性があります。

続いて21年4月期の決算説明資料です。

21年4月期 決算説明資料 p.12

21年4月期は緩やかに売上が増えています。
合わせて、先ほど見てきた20年4月期の2Qの売上が突出していることも分かりますね。

消費増税による20年4月期の駆け込み需要があったこと、その後の新型コロナによる事業環境の変化で売上増加が緩やかになった結果が、業績に反映されています。

21年4月期の売上の増加率は落ちたものの、特殊要因が重なったもので、事業拡大の流れは変わらないことがうかがえます。

連結決算開始

去年12月に大和ハウス工業から、ロイヤルゲート社の株式を99.9%購入し、スマレジ社の子会社にするという発表がありました。

スマレジ社でこれまで行ってきたサービスで、スマレジ・ペイメントというものがあります。

スマレジ・ペイメントとは、スマレジ社が契約している、クレジットと電子マネー(電子マネーは21年12月開始)の決済サービスです。専用端末を利用することで、お客様の多様な支払方法を可能にするサービスです。

子会社化されたロイヤルゲート社は、マルチプラットフォーム決済である「PAYGATE」を開発、販売しています。

従来のスマレジ・ペイメントは代理店業務の立場としての位置づけでしたが、ロイヤルゲート社を取り込むことで、決済会社としての機能を持つことになるということです。

21年12月 株式取得による子会社化のお知らせ

ロイヤルゲート社が加わることで、スマレジ社の業績を合算して連結決算を作成する必要が出てきます。

単純に売上や利益が合算というわけでなく、相互に取引があれば、連結決算を行う上では消去しないといけません。たとえば、ロイヤルゲート社がスマレジ社に対し売上を計上しているのであれば、連結決算のうえでは消去、すなわちその売上は無かったことにする、ということです。

ロイヤルゲート社の直近3期分の業績です。

21年12月 株式取得による子会社化のお知らせ

21年3月期の売上は775百万円となっており、毎年売上をのばしてきています。
ですが、利益に関しては損失が計上されており、なかなか厳しい状態が続いていますね。

注意書きにも記載あるように、当期に構造改革などを実施して業績は回復傾向にあるようです。

今回スマレジ社の子会社になったことで、両社のシナジー効果が生まれ、さらに業績回復や新たなサービス展開など、今後の展開が気になるところです。