1月27日にキングジムで、22年6月期の業績について修正するとの発表がありました。
内容を確認していきましょう。
キングファイルといえば
キングジムは、ファイルと電子文具を核とした、情報整理用品のメーカーです。
オフィスにファイリングという文化を生み出した「キングファイル」が代表商品となっています。
ファイルのタイトルをきれいに表示させるために考案された「テプラ」については、ラベルライターとして国内トップシェアを誇っています。
事業としては大きく「文具事務用品事業」と「インテリアライフスタイル事業」の2つがあります。
文具事務用品事業は、
・電子製品、ステーショナリーなどの企画、製造販売
・上記に附帯する事業活動の実施
としています。
ファイルの製造は、インドネシアとベトナムの海外子会社で、ファイル用とじ具の製造は、マレーシアの海外子会社で製造とあり、基本的に製造は東南アジアで行っているようですね。
21年6月20日現在で、連結全体の人員は2,157人です。
このうちインドネシア462人、ベトナム172人、マレーシア933人と、合計で1,567人であり、全体の73%程度を占めています。
営業やバックオフィスなど人員が必要な部署もあると思いますが、キングジムでは製造工程にかなりの方が携わっていることが分かります。
一方、インテリアライフスタイル事業は、
・家具、室内装飾雑貨、時計、アーティフィシャル・フラワー等の企画、販売
としています。
子会社で事業のすみ分けを行っており、主な子会社の事業内容として、
・「ぼん家具」が、インターネットによるオリジナル家具の通信販売業
・「ラドンナ」が、キッチン雑貨、フォトフレーム、アロマ関連用品、時計の企画・販売業
・「アスカ商会」が、アーティフィシャル・フラワーやインテリア雑貨の輸入・企画・販売業
を営んでいるとのことです。
各社の新商品の状況ということで、決算説明資料にイメージがありました。
有価証券報告書では、子会社売上が、連結全体売上の10%超(連結会社間の売上のぞく)であれば、注意書きを記載する必要があります。
子会社である、ぼん家具の売上は10%超となっており、グループの中で大きい位置づけとなっています。
また財務基盤に懸念がないのかどうか、いわゆる安全性の観点からも
純資産額1,645百万円÷総資産額2,503百万円=純資産比率66%
と高い比率になっており、問題ない水準と言えます。
業績
次に直近の連結業績を見ていくことにします。
■18年6月期:
売上高 34,788百万円
営業利益 1,912百万円
純利益 1,402百万円
■19年6月期:
売上高 34,329百万円
営業利益 1,395百万円
純利益 963百万円
■20年6月期:
売上高 33,455百万円
営業利益 1,232百万円
純利益 1,081百万円
■21年6月期:
売上高 36,319百万円
営業利益 2,416百万円
純利益 1,963百万円
業績のトレンドとしては横ばい、あるいは少し上向きといったところでしょうか。
特筆すべきは、21年6月期に関してです。
新型コロナウイルスによる影響が大きかったにもかかわらず、売上と利益ともに対前期を上回る好業績となっています。
実績結果としては増収増益となっていますが、じつは年間をとおして、業績予想の修正を何回か行っています。
コロナ禍の業績予想の難しさ
21年6月期の年度決算について、業績予想の修正を3回行っています。
①20年7月
前期である、20年6月期の年度決算が行われたときに、修正を行っています。
■修正前:売上38,000百万円、営業利益2,100百万円、親会社利益1,600百万円
■修正後:売上35,000百万円、営業利益1,270百万円、親会社利益1,030百万円
18年8月に公表された第9次中期経営計画において、21年6月期の目標業績が設定されていましたが、これを下方修正しています。
修正理由としては、
・新型コロナの影響が大きい文具事務用品の海外売上が2,000百万円程度にとどまること
・インテリアライフスタイル事業も、新型コロナの影響で9,000百万円から7,400百万円へ減収が見込まれること
が主な要因としています。
②21年1月
21年6月期の第2四半期決算発表前に、先ほどから一転して上方修正がなされています。
■修正前:
売上高 35,000百万円
営業利益 1,270百万円
純利益 1,030百万円
■修正後:
売上高 35,500百万円
営業利益 2,020百万円
純利益 1,560百万円
売上も増加していますが、営業利益がかなり改善しています。
厳しい事業環境において、施策や費用の必要性を見極め取捨選択を行い、コストの見直しを行っていることがうかがえます。
・子会社である、ぼん家具のインターネット通販
・手指消毒器等の新しい生活様式に対応した製品販売
が好調なことを、主な修正要因としています。
③21年4月
21年6月期の第3四半期決算発表と同時に、再び修正がなされています。
■修正前:
売上高 35,500百万円
営業利益 2,020百万円
純利益 1,560百万円
■修正後:
売上高 36,000百万円
営業利益 2,540百万円
純利益 1,910百万円
営業利益がかなり改善されている点は、先ほどと同様ですね。
修正理由も先ほどと近い傾向になっており、
・子会社である、ぼん家具やラドンナの売上
・手指消毒器等の新しい生活様式に対応した製品販売
が好調なことを、主な要因としています。
④21年7月
そしてついに、21年6月期の決算発表です。
■最新業績予想:
売上高 36,000百万円
営業利益 2,540百万円
純利益 1,910百万円
■実際の業績:
売上高 36,319百万円
営業利益 2,416百万円
純利益 1,963百万円
営業利益は少し下がっているものの、ほぼ業績予想どおりが分かるかと思います。
決算説明資料においても、
・新型コロナで当初の中期経営計画は未達成であること
・新しい生活様式に対応した製品販売が好調
・ぼん家具、ラドンナが好調
とあり、今まで見てきた経緯が記載されていますね。
これまで経験したことのない新型コロナの影響が、事業経営を行っていくうえで、どのように関わってきて、またそれがどのくらいの期間にわたって影響するのかを予想することが、非常に難しい1年であったと言えます。
そんな中でも、キングジムが、巣ごもり需要など消費者のニーズにマッチした経営を行い、業績をうまく上方させていったということですね。
いかにスムーズに環境変化に対応していくことが、とても重要であることをあらためて感じさせられます。